オーストラリアの先住民族アボリジニの管楽器「ディジュリドゥ」の使い手GOMA。2008年から歴史を刻む「頂-ITADAKI-」ですが、彼の名前は交通事故で高次機能障害に陥った2010年を除き、常にラインナップされています。「常連」という言葉をはるかに超越した存在。GOMAは単なる出演者ではありません。渋さ知らズオーケストラと並び、頂の風景の一部だと言えるでしょう。
頂の歴史はそのままGOMAの歴史。頂のお客さんは分かっています。多くの音楽フェスの中で頂だけが持つ特別な「祝祭感覚」を体現しているのがGOMAだってことを。私は、彼の演奏直前、わーっとステージに駆け寄るお客さんの表情を見るのが好きです。
「頂は楽しいね」「頂は雰囲気がいいね」。お客さんは口々に言います。でも、どうして楽しいんだろう。なぜ、雰囲気がいいんだろう。正直、分かりません。説明するのは野暮だとも感じます。2018年の会場で気が付きました。答えがほしいなら、GOMA&THE JUNGLE RHYTHM SECTIONのステージを見ればいいんです。言葉にならない答えが放射されています。
3人の打楽器奏者が織りなすミニマムで強度の高いビートにのせて、のたうち回るディジュリドゥの轟音。楽曲のシンプルな構造が、高揚感をあおります。これは、一つの音楽的〝発明〟だと思います。2018年の頂は、彼らの「Heian Magic」が個人的なベスト曲でした。
いいときも悪いときも、GOMAは頂のステージに立ち続けました。私はいつも、彼のステージを見ながら、過去の頂を思い出しています。日本平の芝生の傾斜、倒れたティピィ、復活したGOMAの倒れ込むような客席ダイブ…。まるで我が事のように。ことしもこの場所にいられる感謝とともに。
頂のファンは、みんな同じ感覚ではないでしょうか。GOMAのステージは、自分の生存確認の場でもあるのです。「生きてて良かった」を共有できる演奏。今年も祝祭空間の幕開けが楽しみです。
GOMA& The Jungle Rhythm Section – ONE GROOVE @ 頂 -ITADAKI- 2015
頂 ITADAKI 2011 GOMA復活ライブ!!